
さて今回は、先日書かさせていただいた「お物壇の進化」に関連したお話しで、「地域別のお仏壇」について少しお話ししようかと思います。
私たちが日々目にする「お仏壇」
実はその形や色、素材は、日本のどの地域に行っても少しずつ違います。
なぜ同じ「ご先祖を敬う心」なのに、形が異なるのでしょうか。
地域によって仏壇の形が異なるのは、まず信仰されている宗派の違いが大きいのです。
たとえば西日本では、浄土真宗の信仰が根強く、本山である本願寺の御堂を模した「金仏壇(きんぶつだん)」が多く見られます。
金箔がふんだんに使われ、まるで極楽浄土の光を映したような荘厳さがあります。

一方で、東日本に多いのは曹洞宗や臨済宗といった禅宗。
禅の教えは「質素・簡素・静寂」を重んじるため、黒檀や紫檀などの自然な木目を生かした「唐木仏壇(からきぶつだん)」が主流です。

つまり、仏壇の形には「教えの表現」が込められているのです。
華やかさも、静けさも、どちらも“仏の世界を形にした姿”なのだと感じます。
私たち仏壇屋が地域ごとに感じるのは、
住まいと暮らし方の違いが仏壇の形を作っている、ということです。
たとえば雪国では湿気に強い塗りや素材が選ばれ、
関東の住宅では洋間やリビングにもなじむコンパクトな仏壇が好まれます。
京間(きょうま)と江戸間(えどま)では畳の寸法が違うため、
同じ「中サイズ」と言っても高さや幅に微妙な差が生まれるのです。
さらに、各地には地場の職人技が息づいています。
✅京都の京仏壇は金箔と彫刻
✅金沢は蒔絵
✅名古屋は欄間彫り(らんまぼり)
✅新潟は漆と螺鈿(らでん)
それぞれの土地の伝統工芸が仏壇の個性を形づくっています。
つまり、仏壇とはその土地の文化そのものの結晶なのです。
地元の風土、素材、そして人の手。
それらすべてが合わさって一つの「祈りの形」になる——
そこに私たち職人や販売者は深い誇りを感じています。
住職として見ると、仏壇は信仰の心の拠り所。
仏壇屋として見ると、仏壇は地域の暮らしに寄り添う工芸。
どちらの視点にも共通しているのは、
「人々の祈りを日常の中に残そうとする想い」だと思います。
時代が変わって、家の形やライフスタイルが変わっても、
誰かを想い、手を合わせる姿は変わりません。
金仏壇でも、唐木仏壇でも、モダンなリビング仏壇でも、
そこに込められた願いは同じ。
「ありがとう」「見守っていてね」という心が宿る場所。
それが、お仏壇という存在なのではないでしょうか😊
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